『飛ぶための百歩』
ジュゼッペ・フェスタ作
岩崎書店
夏のドロミテ渓谷を舞台に
5歳で視力を失った14歳の男の子と、
山小屋で出会った同じくらいの女の子、
まだ飛べない鷲のヒナの「二日間」の物語です。
読み始めるとすぐ、スッと山に行けます。
一度でも山歩きをした人なら誰でも、
その記憶が呼び起こされるでしょう。
強い日差しの登り道から、一歩樹林に踏み込んだ時の
ヒンヤリ感と針葉樹の香りに包まれるあの感じ。
最初の数行でその世界に入ってしまえば
(多分、子供さんでも)わくわく読み進められます。
「いつでもまずは目が見えない人扱い」にイラっとしている思春期の男の子と
彼に会って「なんか気まずい」と会話ができない思春期の女の子。
一方、絶壁の巣で餌を待つ鷲のヒナ君。
「見えない人生」に思いをよせつつ、展開にドキドキ。
彼らを大人視点で見守るもよし、入り込むもよし。
さくっと読み終えられるボリュームで
風が心地よいラストを迎えられること間違いなしです。
冬期パラリンピックももうすぐ。
誰かにプレゼントしたくなるかもです。
(かくいう私も柄にもなく紹介しております。)
蛇足ながら・・・
「自分は速読タイプ」と思われる方には、
ちょっとゆっくり読む事をお勧めしておきます。
ホントに読みやすいのでササっと読めばよめちゃうんですけど、
山の空気を醸す時間を取りながら読む方が、
心の飛距離が出ると思います。