いむげむ亭 ▼ 時々日記

陶芸家 中島惠のブログです。HP→いむげむ亭日常http://imugemtei.g1.xrea.com/

ドラマ 蝉吉の悲劇

予告通り、蝉写真だらけの第2弾です。

「ドラマ 蝉吉の悲劇」 夏が終わる前にアップしますね。

 

その日、「蝉吉」は一番良い場所を選び、
一世一代の羽化に挑んでいた。

程よい風、雨もなく、すべては順調・・と、
その時、誰かが「蝉吉」の柔らかい羽を乱暴につかんだ。

えええ?

 

殻から抜けたばっかりの俺の上で
殻から抜けようとする奴がいる??(白いぷよぷよが蝉吉氏)

命がけの羽化、邪魔が入れば、命とり。
7年土の中で頑張ったのに、ここで終わる運命なのか?

 

とにかく「蝉吉」は柔らかい乾く前の胴体を懸命に左右に動かし
自分の存在を伝えようとした。

そのかいあってか、単に足場が悪いと思ったか、

後から来た蝉は、立ち去った。

これで無事、切り抜けたに見えた、

・・・・が。

 

本当の悲劇はその後起こった。
まず、左右に動かした無駄な動きのせいで、
つかまる位置がずれてしまった。
つるつるしたお尻側にぶら下がってしまったのだ。

そして一番の悲劇、なんと!片方の羽が開かない!!


殻から出た直後に「つかまれた」のでくっついてしまったのだ。

今夜ここで羽化する5匹の中で 

蝉吉の羽だけが、片方 伸びない・・・

 

必死で片羽を震わせ、伸ばそうとする蝉吉。

(変形があるのは比較するとよくわかります)

 

何度も片羽だけを震わすが、

お尻側にぶら下がっているので踏ん張りがきかない!

幾度も繰り返すうち、とうとう中の足が滑り、爪が外れてしまった!

(落ちるかと思った)

前足の爪をひっかけ、何とかぶら下り態勢を維持する蝉吉。

ツルツル側にかろうじてかかる細い爪2本だけが命綱


もし今落ちると、反射的に羽ばたいてしまう。
乾く前に羽ばたけば、羽は皺クチャになりくっつきあってしまう。
そのまま固まり、一度も空を飛べないまま朝には鳥かアリの餌食となる。

がんばれ蝉吉! 枝よ揺れるな、風よ吹くな・・ああ?

でも、吹かないと乾かないのか?・・

んん、じゃあ、風よ!イイ感じに吹いて!

何とかここまでは伸びた。けど、やっぱり曲がったままの羽。

 

3時間が経過して、夜中。

 寝る前に気になってもう一度見に行く。

色が変わり始めるところまでこぎつけていた。

最初に殻を脱ぎ始めた仲間は(左上)行程完了、先に葉の上で休息。

被害者のセミ吉は左下、前足だけでなんとか持ちこたえている。

それをしり目に乗っかってた加害者の蝉さんは、

順調に羽を伸ばし中。(右下)

 

翌朝。

ただただ青い夏空と3つの殻があるばかり。

周りを探してみたが、落ちた羽も見あたらず・・・

という事は・・・

無事、空に飛び立ったという事!!

(最後が悲劇じゃなくてよかった、よかった。)

暑い夏の夜の、小さな命のドラマ。