いむげむ亭 ▼ 時々日記

陶芸家 中島惠のブログです。HP→いむげむ亭日常http://imugemtei.g1.xrea.com/

猫は前しか向かない 「4 行く」

その時がきたら。
終末期を前向きに生きる猫の弟子(?)として、
ひとつ頑張ってみようと決めていたことがあった。

それは「ブラッシの歌」を歌って送る事。

平等院の雲中供養菩薩も華やかな楽隊だし、
玉三郎さんの演じた稲葉屋お孝だって、
死出三途を小唄で渡ります」が決め台詞だ。
何か決めておかないと、自分が大変なことになりそうだし、
それで少しでもグニャの苦しさがまぎれたらいいな、とも思った。


食べなくなって23日。
10月10日夜、その時は来た。
短時間の、最初で最後の心臓発作。

直ぐに胸に抱きかかえた。
苦しい、と強く開かれた目が口元が、私に訴える。
大丈夫だよ、大丈夫だよ。

神様、どうか平安を。
「ブラッシブラッシ♪」とあの歌を
なんとか声にする。

ピンと立った耳はこっちを向いていた。
見開かれていた瞳が和らぎ
まなざしに「ちょっと考える時の表情」が浮かんだ。

歌が届いたのだ。

食いしばり、牙を見せていた口元から力が抜け、
穏やかなは私を見つめたまま、
優しい顔に変わって、体の力も抜けていった。

その時、わかった。

歌を聴いたグルニャはちょっと考えて、それからお風呂に行ったんだ!
日常の日課そのままに、ブラッシしてもらおうって思って。

ただ、立ち上がった時に『からだ』を抜け出したというだけ。

こいつはすごい。
さすがグルニャ、さすが猫。
哺乳類なら終わりはこうありたい。うん、尊敬。


そうそう、それから少し遅れて、
透明なおしっこが流れてきた。
のある毛皮の上を、金色ビーズのようにコロコロ光る。
手のひらにぺットシートを当てて
最後の体温と、健康な尿を受け止めた。

投薬の9年間、過剰利尿激務を強いられてきた腎臓からの
「胸水から守りぬいたぜ!」という最終通信。
共に作戦を完遂し、今、沈みゆく友軍の船を見送るような気持ちで
「腎臓さん、ご苦労様」と言いながら
すこしだけ誇らしい気持ちになった。

(10日 13時 お見舞いに行くと頭をあげようと頑張っちゃう。)

 

猫は前しか向かない 「3 ブラッシ」

9年前、病気が始まった頃、
獣医さんから『お風呂』を禁じられた。
ストレスと、水濡れ、両方が心臓に負担をかけるからだ。

以来、清潔を保つために
私が風呂に入る直前にお風呂場での
「ブラッシング」と「濡れ手で抜け毛クリーニング」が
習慣になった。

グルニャはこれが大好きで、時間になると催促にくるほどだった。
仕事場から夜中まで戻らない日でも
私の座布団の上に座り込みで「ブラッシの時」を待っていたっけ。

ブラッシ中はいつも、
口から出まかせの歌を聞かせていた。
「ブラッシブラッシ♪グニャグニャミョミョン♪」
(とても書けない、テキトーな歌詞)

グルニャもいつしか聞き覚えて、
この節を口ずさんで誘うと、
ちょっと考えたような顔をしてから立ち上がり、
自ら風呂場へ行くようにもなった。
風呂場で歌いながらグルニャの背中にシリコンブラシを滑らせると、
グルグルどころか「バリバリ」と聞こえるほどの勢いで
喉を鳴らして喜んでいた。

結局9年半、風呂もシャンプーもせずにいたけれど
グニャは匂いもしなかったし、汚くもならなかった。
もちろん皮膚トラブルも一切なかった。

つまり
水を嫌う子には風呂なんか不要なのだ。
シャンプーにヘアカットなんて人間がしたいだけ
猫の手入れサロンは、よいお商売になっている。
けれど、この点もやはり、

自然が教える通り、猫のしたいようにして正解だったと思う。

 

(もっとマッサージしてほしい時のおねだりポーズ)

 

猫は前しか向かない 「2 薬を選ぶ事は」

自然からの導きは猫に聞くとしても
自然では済まない判断も残る。

 

一番難しかったのは「薬」のことだった。

食べないのだから薬も当然飲まない。
どの薬を優先して飲ませるかを決めなきゃならない。

心筋梗塞を抑える薬、 血栓を溶かす薬、
肺に水を溜めないために利尿作用のある薬

どれも9年間、命を伸ばしてくれた薬だ。
やめる薬を選ぶ事は、死に方を選ぶ事。
とてもつらい選択だ。

一人では決められず、獣医師さんに電話で相談し、
考える手助けをしていただいた。

これまで9年間、薬を取りに行くたびに
病状について重ねてきた会話が土台にあるから、
厳しい見極めも言葉にして頂けたのだと思う。
時をかけて得た信頼は何よりの宝!

それを強く実感した。

 

(小島先生、ありがとうございました)

 


なお、これ以下は、
「最終段階で薬を絞りこむための考察過程」です。
【胸水と心臓肥大のある高齢猫の投薬とみとりの例】を
知りたい方のみお読みください。

それ以外、特に猫の飼育をなさっていない方には
不要の記録になります。

1────────────
<獣医師さんからの意見>
この衰弱の原因として
「9年も飲んでいる利尿剤が効かなくなっている可能性」
「腎臓が悪くなっている可能性がある」

<私の観察と考察>
尿はほどほどの色で出ているし、
水も自分でヨタヨタ歩いて行ってでも水飲み場で飲んでいる。

したがって、
【腎臓は機能&利尿剤はまだ効いていると考える】

2────────────
<獣医師さんからの意見>
「ガンについては食が進まないので、ガンも育っていない。

したがって転移を心配する必要はない。」

<私の考察>
→肺ガン転移等、ガン由来の衰弱は考察から排除できる。

3────────────
<獣医師さんからの意見>
「努力呼吸があるなら、肺に水はある程度溜まっていると考えられる。
注射で抜きに行く処置と、ストレス・感染症の危険性を天秤にかけて判断が必要。」

<私の考察>
→ 痛い医療行為はなるべくしない。
 呼吸が救急レベルにならない限り、予防的に水は抜かない。

4────────────
<私の考察>
・・・そうなると、
①自身の胸水で溺死②餓死③心臓発作か血栓

選択肢から、安楽なものを選べば
おのずと投薬優先順も決まる、と。

そう考えるに至り、最後の質問へ。

5────────────
<私の質問>
先生、
胸水が溜まって呼吸が出来なくなるのと、餓死とどちらが苦しいですか?


<獣医師さんからの解答>
「とても苦しいのは胸水の方です。この年齢の餓死は衰弱死なので、
比較的苦しみは少ないでしょう。」

→では、胸水を溜めないケアを継続、餓死を選びます。

<獣医師さんからの意見>
「ならば、利尿剤は継続です。心筋梗塞の薬も継続です。
 血栓予防はもう不要かとおもいます。」

→考えがまとまりました。ありがとうございました。
───────────────────────

猫は前しか向かない 「1グニャ猫大師」

夏休みが終わった頃から
猫の食欲が、がたんとおちた。
ほとんど食べない日が増えてきて、
毛皮の下の背骨がわかるようになり、
呼吸の度に肋骨の形が見えるようになり、
足取りはよろめき、歩く速度は遅くなっていく。
眠っている時間が延び、
その衰えをハッキリと感じるようになった。

確実にもうすぐ、という別れの予感。

9年間も、毎日その瞬間に備えていたはずなのに、
今更ながらこの猫さんが消えてしまった時の衝撃が
どれほどなのか、想像できず、不安。
不安が先に立って、この後私がどうするべきかを
まとめる回路が働かない。

これでは、いかん!!
受け止めるための心の準備をしなくては。

そう考えて、ネットをアレコレ読みあさった。


役立ったと思うのは、
「同じ病気の猫ちゃんを看取った方々のブログ」
この先起こるであろう事が、視えて心構えができた。

それと、
獣医師さんによる、
「猫のターミナルケア(終末ケア)についてのページ」

『食べなくなること、飲まなくなることは
旺盛な命では「マイナス」だけれど、
ターミナル期には、むしろ「プラス」であり、
楽に穏やかに肉体を終えるために
自然が授けた恩恵だという考え方』だ。

これがとてもしっくりきた。

グルニャは、幼児期の重大事故の時だって
かけらも自分が死ぬと思ってなかった。
9年間の延命治療中も、呼吸困難の発作の時もそう。

自然が示す現状には逆らわない不安にならない
そして、一つも諦めない
常に食べようとし、飲もうとし、
歩こうとし、遊ぼうとしていた。
ひたすら前向きなイキモノとしてあり続けてきた。

その子が、ここへきて「食べたくないよ」というなら、
それは『前向きな自然の導き』なのだ。

 

人間は、自然を先読みして利用し豊かに生きられる。
だけどその分、先読みが自身に告げる未来に恐怖する。
読み違いを恐れて迷う。後悔する。
どっちにしても避けられない終末を受け入れ難くて
無駄に苦しみを増やしてしまう

つまり。
終末期の心のありようとして
優れているのは猫の方。

わかった。
グルニャが先生なんだ。
達観に至っているのはグルニャだもの。

命が終わりそうなのはグニャなのに、
失った後の事で不安になっている私って
煩悩だらけの至らぬ者!よね。

だから私は弟子になろう。
グニャ猫大師がキャッチした自然の導きを、
よく見極めて、弟子の私がそれを補助する。
それが最善!決まり!

あと嘆くのは即時停止!!

ここまで整理がついて、
ようやく(少し)落ち着いたのだった。
9月も後半になっていた。

(2につづく)

(膝の上のねこ)

猫は前しか向かない 「序のつけたし」

前回「序」をここにアップした。

ところが、その日の夜が
永遠のお別れになってしまいまして。

続きを書こうとしてみたのですが、
驚くほどに自分自身のコントロールがつきませんで
2回目の月命日も過ぎてしまい・・

これは良くない、情けない。

何としても、今年のうちに
猫のグルニャとのことは区切りたいと思い。

読んでくださいと言えるレベルにはならないかもしれません。
ペットに、猫に、興味のない方には
まったく無駄な文字列だと思います。
でも、
とにかくなんらかの文字の塊に
まとめてしまおうと決めました。

よろしかったらお付き合いください

 

 

猫は前しか向かない 序

あれは2021年の秋ごろ。
便秘気味の「うんこでろでろマッサージ」をしていて
?乳首?に手が触れました・・オデキ?虫刺され?
多分普通に乳首がそこにある、と解釈しスルー

が。マッサージで触れるたび
少しづつ大きくなる気が・・不安になり調べました。

!【猫の乳がん】 私の頭ガンガン!


家の唯一猫グルニャン、通称グニャ♪
生まれた年に頸椎損傷で寝たきり、そこからの奇跡の復活。
ところが7歳で突然起きた呼吸困難発作。
原因は心臓すでに心肥大。
心臓由来の胸水が肺を圧迫して死にそうに。
麻酔なしで針刺して肺から水を抜くこと2回。
以降、胸水排出のため、薬を一日2回4種類も飲み続けて9年間
それなりに平和に延命してきました。

ちょっと神様、この上にガンくれるんですかい?!
これって喧嘩売ってますよね???

神様的には、9年延命できてる時点で
十分ご利益施しました~って事ですか???

神が返事をくれないので、迷える飼い主は
獣医師さんに相談しました。

獣医さんのお話
「猫の乳がん手術は大掛かりで
傷口がとても大きくなります。
(腕の付け根のリンパと足の付け根のリンパと
その間にある乳首を一列全部摘出するそうです。)
治るまでの期間と苦しみを
年齢、余命と天秤にかけて考えたとき
苦しい時間だけが長くなりすぎます。

しかも従来の投薬を休まなくては、手術はできません。
胸水による呼吸困難発生リスクが高いグルニャンちゃんは
これが命にかかわります。
ですから、切除はお勧めしませんし、私はしません。

家族一同、納得。・・同意。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

そういう経緯で今年は主に
ニャン生に付き合って暮らしてます。

幸い、体を動かす作業沢山たまってまして
私を助けてくれてます。
ついつい後回しにしてたまっていた地味な作業。
工房の大掃除・さび落とし・ペンキ塗り・屋根保守
土のあく抜きや粉砕などの下ごしらえ。

私は基本、ブログには
「楽しくない事は書かない方針」です。
なので今までは、あまりこのことを書かずに来ました。
でも。
衰えながらポジティブ
【エライ!書きたい!事】も見えてきて。

 

今回は「21~22年のあらすじ」的に書きました。


★なお、猫ぐにゃの登場する過去ブログは、下記リンク
「猫のカテゴリー」にからお読みいただけます♪
↓↓↓
https://imugemtei.hateblo.jp/archive/category/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%A9%B1

 

 

椿の実

庭の椿、実がなる時期。

とにかく、形がかわいい。


丸くてかたくて、だんだんに割れる様子も、分厚い殻も

中から顔を出す種も、とにかくとっても好き。

 

あまりに愛らしいので描き

樹のためには種は実らせない方が良いらしい。
だから、手の届く高さなら
花がポトンと落ちた時、
樹に残る子房も取り去る事にしている。
でも
手の届かない高い所には残る。

一昨年は、種をつぶしてハンドクリーム代わりにしてみた。
ちょっと面倒くさかった。

去年は椿油をつくってみた。
香ばしさと美味しさに驚いた。

今も髪に使っている。

 

おまけ。椿のへその緒