いむげむ亭 ▼ 時々日記

陶芸家 中島惠のブログです。HP→いむげむ亭日常http://imugemtei.g1.xrea.com/

義父の出航

あちこち故障にもかかわらず元気でいてくれた義父の
肺がん発覚と余命告知がなされたのは、
去年の夏頃だったでしょうか。

それでも病を受け入れ泰然としていた義父。
「いよいよ肺にできたらしいや」と、自分で語り、
「手術したって痛いだけ損だって医者も言うんでね」
ニヤッと笑ってタバコをくゆらせて居た姿が浮かびます。

直接介護に当たるのは 
共に暮らす義母。(自身も病を抱えながらの介護です)
それから子供である義兄達、義姉と夫。
私は、受験生がいたことも有り
必要があれば動けるように備える感じでした。

寒くなる頃から、色々起こりはじめました。
年が開けるとその展開はさらに速度を増しました。
(以下闘病部分は、文字色を背景色にして有ります。反転でお読みいただけますが、飛ばして下へスクロールして頂く事もできます。)
イメージ 11月半ば、義父の「トイレは最後まで自力で」という願いを、独力支え続けた義母がダウンしてしまいました。
その日を境に宿泊も出来るデイケア施設に移る事になり、オムツを余儀なくされました。
お正月にはいつもの堀コタツに板を渡して寝転んで、孫やひ孫にお年玉を渡し、ニコニコしていたのに・・
そしてその後、なつかしい掘りごたつに、家に、戻る事は無かったのです。

2月には肺ガンの進行が予想より早いと告げられ、色々早めに、という勧告がお医者様からありました。
そのころ胃が食事を受け付けなくなったのですが、原因が診察でもわからず・・・・
デイケアでは点滴は出来ないので、家族が病院に運んで対処。点滴をうけると軽快し、病院には滞在できず施設へ、また数日後食べられずに病院、と何度も往復する事態でした。
腸閉塞がその原因ではないか、と、一応の診断が付き、病院に居続けられるようになったのは2月も終わる頃だったとおもいます。

それでも、苦しい闘病生活を、
「孫が、高校受験で頑張ってるんだから」と
戦い続けてくれました。

子供の試験がおわり、11日発表、15日卒業式
病室に報告に行けたのが3月17日でした。

短い間に変わってしまったじじちゃんの姿は
子供にとっては大きな衝撃だったようです。
病室の車椅子に座らされて、食事もとれず、
願いに答えて持っていった水羊羹も食べさせることが出来ず。
モグモグと、何言っているのかわからない。

けれど、しばらくするうちに
じじちゃんのリズムが見えてきました。
その変化した肉体の中にはいつもどおりのじじちゃんが
ちゃーんと「居てくれる!」
それが子供にもわかったようです。

子供が「じじちゃん、来たよ!」というと
「毎日(孫達が)来るんで、くたびれてしょうがねぇ」などと
憎たらしいことをいってニヤリ笑顔をみせくれました。
「9年間皆勤だったよ、表彰されたよ」という報告には
「すげえ!」と大きな声で一言、ほめてくれました。
「第1希望に受かったよ!」という報告には、
痩せた手をゆーっくりと差し出して
「握手」で祝福してくれたのです。
子供への返答はどれもTHEじじちゃん!
宝物として記憶されるべき「最高の会話」だったと思います。

でも、そのたった3日後。
3月20日春分の日が命日になってしまうとは。
汁の一滴でもいいから、あの水羊羹を口に入れてあげたかった、と
家族三人、悔やみました。

あの日。
うとうとしては若き日の「軍艦長門」の仲間と語り、
さめては現世の孫と会話し、時々綺麗なコレ(小指!)も来て
意識の移ろい周期は現世時間で約10分、
じじちゃんの時計では、何時間?はたまた何秒だったやら・・・・
緩やかに行ったり戻ったりを繰り返しながら、
少しずつ遠くへいってしまうのだ、と、3人ともが感じてはいたのですが。

斎場で、横たわる義父の表情は実に穏やかでした。

寄せては返すうちにいつか沖へと運ばれて、
長門」が出航する日が来たんですね。
自然にそう思えるような表情でした。

葬儀の朝。
子供が目覚めるなり言いました。
「夢で爺ちゃん、水羊羹食べてた!しっかり食べてたよ。」
晴れた空に三分咲いた桜、川に沿って菜の花、山に芽吹く樹々、
実に美しい春の朝でした。

じじちゃん、長い間ご苦労様でした。
ありがとうございました。

頂いたコメント……………………………………………………………


中学生の頃亡くなった、大好きな祖父のこと、思い出しました。
ご冥福をお祈りいたします。

[ nol ]

2013/4/21(日) 午前 11:46



nol様
来てくれてありがとう。
小さな曾孫達がいたのでね、
元気な笑い声や、時ならぬ子供発言などもあって
あたたかなお見送りでした。

(うちの子供が、焼香のときに柏手を打とうとして
葬儀社の人に寸前で止めてもらったって事件は内緒)

[ いむげむ亭 ]

2013/4/26(金) 午前 7:33



昨年、いとこの子の小さな女の子達が可愛かった。
小さい子達と送ると、なにか人の一生を思います。

[ nol ]

2013/4/28(日) 午前 11:11
nol様
そうですねー
新鮮でつやつやで、かわいい、
そのなかに、しっかり物欲とか顕示欲とかみえて
数十年後はちゃんと「おばさん」に育ちあがるんだろうな、
などと想像していると、そこに「時間流れ」を感じること、
私もあります。
自分もその流れの中でしっかり年取っているんだけど
そこは考えないのだ、ははは。

[ いむげむ亭 ]

2013/5/1(水) 午前 8:29